虚無層

exit from society

vS136(ホワイトメイン追加第3週)雑翻訳(2019/7/19)

 色々考えましたが結局いつも通りやっていくことにしました 今回も総集編と新拡張に期待するものの話とかです

https://www.vicioussyndicate.com/vs-data-reaper-report-136/

クラス使用率

 新カードの公開が始まり、メタの変化は緩やかになった。各アーキタイプの構築が固まり、改良の段階は終わりつつある。前回記事のクラス別分析が総集編みたいな感じだったのはこれが理由。

 デッキ内のカード選択は固まりつつあるが、全体的なメタにはいくつか面白い変化があった。最大の変化はサイクロンメイジの増加で、特に上位帯で爆発的に増えた。レジェンドでの使用率は前回記事のときの1.5倍ほどに増え、単独で他のどのクラス(各アーキタイプを総合した1クラスの使用率)よりも多い。考えられる理由は2つ:

  • グランドマスターズでのサイクロンメイジの成功。レジェンドプレイヤーのデッキ選択はトーナメントの流行を引き継ぐ傾向がある。
  • レジェンドにおけるサイクロンメイジの勝率は前回時点で上昇しており、人々の興味を引いた。

 ハンターは減少、特にレジェンドでは主に爆弾ハンターが劇的に減った。この減少もサイクロンメイジ増加の一因と思われる。爆弾ハンターはラダーでは非常に良い選択肢なのだが大会には出てこないため、レジェ使用率に影響したと思われる。

 メイジとハンターの使用率は大きく変化したが、ウォリアー、ローグ、シャーマンの使用率はほぼ変化なし。少しだけ爆弾ウォリアーよりコントロールウォリアーが増えたのと、レジェンド以外ではサメローグが増えた。あとは同じ。

 下4クラスは無限改良地獄の中におり、現メタにおけるこれらのクラスのパワーの低さがわかる。パラディンドルイドは幸運にもひとつは戦えるデッキを持っている。ウォーロックとプリーストは不運。これらのクラスには新拡張があまりに待ち遠しい。今環境の最大の問題は、弱いと「感じる」クラスが多すぎることかもしれない。

 大会の影響力も大きい。スペシャリスト形式は多様性に欠け、最強・最良以外のデッキの見せ場がなくなってしまう。コンクエスト形式やラストヒーロースタンディング形式ではより多くのヒーローが登場し、スポットライトを浴びる機会があった。それにより、最強デッキ以外もラダーで見ることが多かった。

パワーランキング論議

 環境デッキだけを見れば、特にレジェンドでは、バランスはとれている。ひとつのデッキが他のどれよりも飛び抜けて強いということはない。ランクが上がるほど爆弾ハンターのパワーレベルは下がる。サイクロンメイジは使用率は爆増したが勝率も上がったわけではない。とはいえやはりレジェでは充分強い。ウォリアーはパワフルだが環境によって抑えられている。他の拡張と比べても、トップデッキ群のパワーバランスはかなり均一。バランス調整の効果はプラスだったと言える。

 新拡張に期待するものは多い。突撃探検同盟はこれまで蚊帳の外だったクラスたちが喧嘩に乱入できるか否かが問題になるだろう。プリーストは忘却の彼方から帰ってこれるのか。ドルイドウォーロックはDr.ブームに対抗できるレートゲームを獲得できるのか。パラディンとシャーマンはピン芸人を脱出できるのか。

 カード公開については、全カード公開後にvSでも何らかの記事を作る予定。おそらく全カード事前評価。大胆に予想していきたい。トークンドルのように的中することもあれば、秘策パラディンのように大外れすることもあるだろう……

 8月6日には理論構築の記事も公開する予定。魔素を全部はたいた上でウォリアーに負ける心の用意が出来たらぜひ読んでほしい。

クラス別分析

メイジ

 初期は最弱と思われていたが段々強さが発見され、メカバフを経て最強の一角になったドラマチックなクラス。

 ワタリガラス年のメイジのカードはパワーが低いのもあって、マナサイクロンと召術師の招来は明らかにパワーカードであり構築の中心になりうる。招来は初期ではミニオン主体のデッキで、亡霊の書で最速3ターン目に出した山の巨人に使われていた。しかしこのデッキは防御や遅延に乏しいためアグロに勝てないでいた。一方マナサイクロンは呪文主体のデッキで使われていたが、ウォリアーに勝てずよくてTier5だった。

 そして招来とサイクロンが出会い、スペル主体だが巨人4枚も搭載したサイクロンメイジ(初期の名称はミラクルメイジ)が誕生した。Tier5から一気にメタの一員へと躍り出たが、まだローグとウォリアーに難を抱えていた。

 そして2回の黄金のパッチが訪れた。最初のナーフパッチではローグが低速化し、メイジのスイングターンが間に合うようになった。メカバフで最後のピースとなる5マナのポケット銀河系が手に入り対ウォリアーが改善。これで環境トップクラスのうち2つと良好に渡り合えるようになり、自らもトップ入りした。8月6日まではトップで居続けるだろう。

ウォリアー

 伝統的に耐久デッキに向いたクラスであり、相手の脅威を除去してリソースを枯渇させることで戦うことができるが、ワタリガラス年にはデスナイトという無限バリューがあったため弱かった。のちに狂気の天才ドクターブームという弱めのデスナイトを獲得。奇数ウォリアーは強いがマッチアップが極端で、奇数でないコントロールウォリアーは全く強くなかった。

 しかし年が変わってデスナイトや多くのOTKパーツがワイルドに送られ、狂気の天才はレイトゲームカードとして飛び抜けた存在になり、ウォリアーは悪党同盟の全期間を通してリソース争いでは他の追随を許さないクラスになった。加えて爆弾ウォリアーはコントロールウォリアーに不可避のダメージソースを追加し、またドローに頼りがちなコンボデッキを軒並み壊滅させた。

 ウォリアーの除去はあまりに強力なため盤面維持を前提としたアグロデッキが存在できず、その意味ではウォリアーがメタに与えた影響はどのクラスよりも大きい。ウォリアーはいかなる意味でも一強ではなかったが、ウォリアーをメタれなければ使えないという意味では確かにメタを定義していた。ナーフ前からローグを倒せた唯一のクラスだったし、バランス調整後はより強くなっていたと言えるだろう(ローグはまだ人気だったしアグロシャーマンも現れたのに、勝率を維持したので)。

 新拡張の最も重要なファクターの一つが、この狂気の天才と争えるようなレイトゲームが組めるかどうかになる。開発がブームをナーフしないなら、それ以外を強くするしかない。

ローグ

 悪党同盟の初期はローグが支配していた。ぶんどり部隊によって恐ろしくパワフルなアグロデッキが生まれ、ワグルピックで狂った量のバーストを出していた。強力なドローソースによってデッキの安定性も極めて高く、武器破壊が中心の環境を生み出した。環境全体が対策したにもかかわらずローグは強力であり続けたが、嫌われ者だったためウィッチウッドの偶数パラや凍てつく玉座翡翠ドルのような帝王級の勝率・使用率には及ばなかった。

 段取り、ぶんどり部隊、悪党同盟の悪漢のナーフによって、ローグは低速化して結果よりバリューを重視するようになった。サメローグが最も人気のデッキとなったが、大会では成功してもラダーでは成功しなかった。

 ローグはスペシャリスト形式というルールの中では柔軟性の高いほうだが、30枚自由に組み替えられるラダーにおいてはその柔軟さは発揮できない。メイジやウォリアーといった明確で一貫性のあるデッキのほうがラダーでは優秀。サメローグはウォリアーの耐久を超えることができず、その弱点を補えるほどメイジに有利でもなかった。

 それでもなおローグというクラスは最強の一角だったし、新拡張でも何らかの大きなポジションであろうことは容易に想像がつく。結局ローグはスタンダードにおける最強カードを何枚も持っている。電線ネズミと組み合わせた強盗王トグワグルはヤバイ。マイラの不安定元素もヤバイ。フックタスクも。血の復讐もヤバイ。あのポゴホッパーですら、マナコストの軽量化によってあと少しサポートがあれば最強デッキになれるポテンシャルを手に入れた。

ハンター

 悪党同盟のほとんどの期間ラダーで成功していたクラス。バクとゲンが殿堂入りとなり、どこからともなく現れたアグロのハンターデッキが爆発的成績を叩き出した。ミッドレンジハンターはズルジンを中心により遅いデッキとして確立し、秘策ハンターは過小評価されていたがローグに最も効果的なデッキとして優秀な選択肢だった。

 爆弾ハンターはローグの低速化とチョッキンガーの追加を経てすごく強くなった。レジェンドを目指す中でほとんどのランク帯のプレイヤーにとって最強の選択肢だが、レジェンド以上ではそれほど支配的ではなかった。それでも今もなお爆弾ハンターはメタを定義する最強デッキのひとつで、対戦相手としても無視できない。

 悪党同盟初期のミッドレンジハンターはぶんどり部隊ローグの圧倒的バースト力に対抗できず苦しんでいた。ローグナーフ直後はその優秀なマッチアップ分布によって最強デッキのひとつになった。不幸にもそのあとすぐメカメカ大躍進によってミッドハンターは再び弱デッキとなってしまう。

 しかし結局のところズルジンはスタンダードのレイトゲームのカードとしては最強レベルであり、このカードのおかげで秘策ハンターは拡張全体を通して勝ち組だった。新しいハンターの呪文によってデッキがどれだけ強化されるか期待。

シャーマン

 拡張のほとんどの時期でパワーランキングの真ん中あたりにいたクラス。メカバフ以前では戦えそうなデッキはひとつしかなかった。マーロックシャーマンはこのクラスで作れる唯一の強デッキで、アングラ・アングラーという飛び抜けたリソース源を核にしていた。あらゆるシャーマンのクラスカードのなかでもこのカードが最も強烈な単独パワーを持っている。

 一方で、レイトゲーム系のシャーマンは明らかにパワーカードを貰っているにもかかわらず失敗した。コントロールシャーマンはウォリアーと同枠で戦う力がなく、ビッグシャーマンは一時期期待されたが生き残れなかった。

 ゆるやかに腐りかけていたこのクラスに活力を与えたのが雷雲へのバフ。バランス前から既に強力だったうえ、3/6のステータスを手に入れた雷雲は直球のパワーカードと化し、アグロオーバーロードシャーマンを誕生させた。このアグロシャーマンはきわめて優秀なマッチアップ分布を持っていたが、ウォリアーに弱かったため最前線からは一歩引いていた。実際、あまりにウォリアーに弱いため、メカバフ以降でもマロシャーのほうが強いとすら言えた。

 もし新拡張と同時にウォリアーが弱体化し、他の防御系デッキが立ちふさがらなければ、アグロシャーマンは環境の覇王になりうる。

パラディン

 今年になってゲンとバクと断罪のウーサー・エボンブレードを失ったパラディンはアグロにもレイトゲームにも大きく打撃を受けることとなる。しかしそれでも他のパワーカードを手に入れたおかげで、メタにおける地位を失いはしなかった。強力な序盤の戦略である秘策パッケージと、レイトゲームのスイングカードである無限軍団はまだ残っている。

 しかし拡張前の予想は裏切られ、秘策パラディンはまるで強くなかった。神聖なる恩寵を殿堂入りで失ったためにカード補充ができなくなり、安定してフィニッシュまで持っていけなくなった。また聖なる怒りパラディンはこの環境では強さが足りず、ウォリアーと全く張り合えなかった。ドラゴンパラディンやビッグパラディンといった実験は生まれてすぐ消えていった。

 あとに残ったメカパラディンがこのクラスの唯一の希望だった。が、そのマッチアップ分布は相性さが極端で、ウォリアーは勝ち確だがメイジやシャーマンには負け確といった状態だった。クリスタル学を1マナに軽量化したのはしばらくプレイヤーたちの興味を引いたし、実際このカードは将来ぜったい重要になる。クリスタル学はスタンダードで得られる最強のドローソースでありメタを破壊するポテンシャルがある。よって新拡張で強力なアタック1のミニオンが登場することを願う。

ドルイド

 今拡張のドルイドを一言で表すなら「退屈」。決して最低のクラスではなく、拡張を通じて使えるデッキを持っていたが、それがあまりにも変わらなさすぎた。

 トークドルイドは拡張の最初期に発見された。実際のところ拡張が始まる前から既に発見されていたと言ったほうが適切か。このデッキのリストは拡張初日からメカメカ大躍進まで1枚も変わらなかった。チョッキンガーが現れたことでようやく少し変わった。

 トークンドルは拡張最序盤から突然現れて環境を荒らし、ローグやウォリアーとも五分で戦えるように見えた。しかし最終的にはメタに追いつかれ、トップの座を降りることになる。そこから、トップになることなくそこそこ戦えるデッキとして堅実に地位を維持する。

 悪党同盟でドルイドが失った最も大切なものはランプのナーフによるレイトゲーム系のアーキタイプ。遅いドルイドはマナでズルしないと生き残れないことが判明した。究極の侵蝕と拡がりゆく虫害で良い思いをしたツケを繁茂滋養ダブルナーフで払わされている。今やドルイドは拡張でランプ系のカードを足してもらわない限り、小型ミニオンをばらまいて獰猛な咆哮するだけのクラスでしかない。

 新拡張への期待は高い。少なくとも以下のうち片方は欲しい:

  1. 現在のレイトゲーム系デッキのフィニッシュを加速させるための、強力なランプ系のカード
  2. 現在の弱い序盤を補える、より強力かつ軽いマナで可能な勝ち筋、あるいはスイングの手段

 もしどちらも手に入れられなければ、引き続きドルイドトークン芸人のままだろう。

プリースト

 悪党同盟におけるプリーストはハースストーンの歴史に残る悲しみのクラスだった。もちろん年初のプリーストが弱いのは毎年恒例の行事であり、そのたびに我々はプリーストのクラシックのカードがあまりに弱く、そして拡張のパワーカードによって毎年どん底を抜け出してきていることを思い出す。今拡張のプリーストはアイデンティティも進むべき道も見失っており、勝ち筋というものがなかった。倍増する腕の軽量化でわずかにバフされたが、得たアドは全て思念撃破の殿堂入りで消し飛んだ。ミラクルノミプリーストが本物に見えたのもわずか一週間にすぎず、幻のように消えていった。

 ここ数か月、プリーストはあまりに多くのデッキに分裂しているため、ラダーでプリーストと出会っても何のデッキか分からない状態が続いているが、どのデッキも所詮弱いため気にする必要がない。

 そして次の拡張でまたパワーカードを与えられるであろうことは容易に想像できる。この定期的な神・ゴミサイクルが再び回る。心の準備は出来ているか。

ウォーロック

 悪党同盟はウォーロックに優しくなかった。マンモス年のスタン落ちでコボルト(歴史に残るレベルで最強のクラスカードが詰め合わされた拡張)が消えた結果、今拡張のウォーロックは歴史に残るレベルの最弱カードプールで戦わされた。どんでん返しのような微妙な小手先のトリックしか勝ち筋が存在せず、最早古式ゆかしきズーをやるしかなくなった。

 ズーは実際初期には成功した。魔法の絨毯は構築の核になるパワーカードであることが判明し、今拡張のウォーロックカードでは一番強い悪党同盟の異才を加えてデッキが完成した。しかし環境序盤の未改良デッキをひととおり叩いた後、環境が固まるとともにズーの成績も低下。他のアグロデッキに序盤争いで勝てず、特にメカバフでアグロシャーマンが現れてからは完全にお株を奪われた。

 おそらくレイトゲーム系のウォーロックに必要なのは回復。これまでの歴史で何度も見たように、ウォロは回復カードを持っていれば強く、持っていなければ使えない。ヒロパとのバランスが難しいメカニクスではあると思う。しかし間違いなく必要不可欠。あなたがウォーロックファンなら、新拡張の回復に注目しておきたい。

今週のメタブレイカ

 サイクロンメイジはここ最近で最もインパクトのあるデッキで、上位での使用率は劇的に跳ね上がり、ウォリアーのそれを超えている。典型的な遅咲きのアーキタイプであり、シーズン途中のバランス調整によって強化されたデッキでもある。経験者プレイヤーでなければおすすめできないが、努力に応えてくれるデッキ。

 新拡張まであと少し。次回は直前になる。

 

 お疲れさまでした。